旅の記憶

家族旅行で気づきのアンテナの感度を高めるには?|Bangkok|2025

2025年3月2日

数日前から”微笑みの国”に来ています。

そうです。ここはタイ。

たとえ大都会バンコクであっても、こんなにも穏やかな気持ちになれるのはなぜでしょう。屋台から漂うナンプラーの匂い、鼻から抜ける鼻音の多いタイ語の柔らかい雰囲気、人々の微笑み。それらが混ざり合い、気がつくと、心がほどけていきます。そういえば、学生時代に本屋で手にした『地球の歩き方』のタイ編には「やすらかなる国 タイ」と書かれていたっけ。

今回はそんなタイの魅力にまだ触れたことのない妻の両親との家族旅行を企画してみました。妻の両親は極寒の宮城から、義妹はクアラルンプールから、僕と妻はペナンから。それぞれの街から出発し、バンコクで合流しました。

合流地となる宿選びは慎重に、じっくりと時間をかけて妻と話し合いながら決めました。

そこにいる旅人の平均年齢が比較的高く、落ち着いている一方で、適度な賑わいがあり、わくわくする雰囲気が漂うエリア、そして、周辺の街歩きも楽しめる。

そんな条件を満たす場所は”Soi Samsen 4”の一箇所しか思い浮かばず、最終的にSoi Samsen 4とSoi Samsen 6周辺(カオサン通りから北東へ15分ほど歩いたところ)で見つけた小洒落た一軒家をまるごと借りることにしました。

家族5人での滞在となれば、旅の過ごし方も自ずと考える必要があります。全員で一緒に行動するのもひとつの形ですが、旅のスタイルは人それぞれ違うので、各々の好みを尊重しながら、心地よく旅を楽しむにはどうすればよいか⋯。

旅の目的やスタイルは千差万別。

一人でひたすら街を歩くのが好きな人もいれば、「不安だから誰かがずっと一緒にいてくれると楽」という人もいます。「旅行といえば買い物でしょ」という人もいれば、「美味しいものさえ食べられればそれでいい」という人も。

「ガイドブックに載っている観光地は制覇したい」というガッツリ観光派もいれば、「宿でのんびりが好き」「ホテルのスパでリラックスしたい」というのんびり派もいます。

ほかには本を数冊持ってきて、「この本を読み切るのが旅の目的」という人や「観光とかは別に。友だちに会いにきただけ」なんて人もいますよね。

今回の僕たちはというと、タイを初めて訪れる妻の両親に「バンコクの街歩きの楽しさと、やすらかなる国の人たちの温かさを感じてもらうこと」が主な目的。

ふたりは、一日中歩き回る旅よりも、少し歩いてホテルで休み、夕方からまた食事に出かけるようなのんびりした旅を好みます。そのため、無理に詰め込まず、ゆったりと過ごせるように意識しました。

僕たち夫婦がお気に入りの場所を朝から夜まで一緒に巡ることもできます。でも、旅には、偶然の出会いやふとした風景に足を止める余白があったほうが、記憶が深く刻まれ、いつまでも誰かに語りたくなるような旅の物語が生まれます。だからこそ、できるだけ個々が自由に動ける時間を確保しようと考えました。

言葉もわからない異国の街で一人になると、すべての行動が自分の判断に委ねられ、自然と周囲への注意が研ぎ澄まされます。

道行く人の目線や街の空気の流れが、いつも以上に鮮明に感じられるのも、気づきのアンテナの感度が高まっているから。それは、一人旅ならではの感覚。

とはいえ、無理に旅の刺激を求めて、辺鄙な場所へ足を伸ばす必要はありません。「一人で自由に⋯」は、日常の延長にある、些細な出来事で十分です。

例えば今回、Duolingoで英語を勉強中のお義父さんには宿の近くのランドリーへ毎日洗濯物を出しに行ってもらいました。

店頭で「サワッディーカップ」と挨拶し、前日に預けた洗濯物を受け取り、代金をバーツで支払い、帰り際に「コップンカップ」と、お礼を言って100メートル先のホテルまで歩いて戻る。

ほんの些細なやりとりですが、現地の人たちの暮らしに触れ、その土地に少しだけ溶け込むような感覚を味わえる時間になります。「洗濯マン」となったお義父さんがこのミッションをどう感じているのかはまだわかりませんが、ほのかな満足感と共に、そのひとときが、やがてふと蘇る記憶となってくれたら嬉しいです。

これまで数日を過ごしてみて、一人静かに歩きたいときは一人で、誰かと一緒に動きたい人は誘って一緒にというように、それぞれが自由に動きながらも、互いのリズムを乱すことなく、心地よい距離感で旅を楽しめているように感じています。

今回は片道切符で入国しているので、スケジュールに縛られることなく、「もういいかな」と思える日までバンコクで過ごすつもりです。(最大30日滞在可)

僕と妻にとって、タイは19歳から通い続けている旅の学校であり、出国の瞬間にはいつも「去りがたい」と思わせてくれる国です。バンコク最終日には妻の両親にも「またぜひ来たい」と言ってもらえるような心に残る旅にしたいと願っています。

コップンカップ。

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ご訪問ありがとうございます、たびなすび(プロフィール)です。現在、マレーシアのペナン島を拠点に生活しています。このブログでは日常の小さな気づきや、心に残った旅の瞬間などをお届けしています。このブログが新たな冒険や発見のきっかけになれば嬉しいです。「住みたくなるようなお気に入りの街」を探す旅に出てみませんか?

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