2024年12月某日
ペナンからタイのリペ島へ車で向かっていた日のこと。
何かがおかしい⋯
「ここって湖じゃないよね?田んぼだったよね?」
確か、いつも妻が「実家と変わらない景色だから感動も何もないよ」と呟いていた美しい田園風景だった場所が、この日は湖と化していました。
Googleマップの注意(⚠️)マークを甘くみていたかもしれない。
ナビの案内に従い車を進めると、冠水した道路を前にした車たちが渋滞を作っています。進むべきか戻るべきか、運転手たちは様子を伺いながら迷っているようでした。
ぱっとみた感じでは、距離は短いが、深い⋯。
「ここはダメでも、別のルートからなら、きっと行けるよね?」
Googleマップの迂回ルートも調べましたが、エリア一帯を襲った大雨で街全体が麻痺していて洪水を免れた道は見当たりません。
進むか引き返すかの選択を迫られましたが、僕たちは前方の小さな車を頼りに、慎重に濁流の中を進むことに⋯。
あちこちに脱輪している車やエンストした車⋯
そんな状況であるにもかかわらず、現地の方々は慣れているのか、どこか余裕の表情。車の外に出て談笑する家族や、「大丈夫、全然行けるから」と、手招きしてくれる青年もいました。
僕も普段はあまり動揺したりはしない方なのですが、今回は一人旅でも夫婦旅でもなく、同行者の友人夫婦を乗せていたので、やや緊張感もあり、安全にこの場を凌ぐことに集中しました。
ハンドルを握る手にも力が入り、エンジン部分に水が入りこまないことを祈りながら、ゆっくりとアクセルを踏みます。

そんな中、後部座席からは
「Kさん、自分で運転してたらおどおどしてるのに、今回は乗ってるだけやからええな!」
「これぐらいやったら、オレも平気やわ!」
「絶対ちゃうわ!自分で運転してたら絶対おどおどしてるで!」
奥さんのテンポよい旦那さんへのツッコミが続き、緊張感漂う車内に笑いが生まれます。この状況で笑いはありがたかったです。
その後、何とか冠水エリアは過ぎ、友人夫婦の明るいトークに支えられながら、無事国境へとたどり着くことができました。
マレーシアでは雨季にこうした被害が頻発する地域も多く、洪水への備えとして家が高床式になっている場所も見られましたが、それでも完全には防ぎきれなかったようです。
後からニュースを確認したところ、僕たちが通った西側では被害が比較的軽かったものの、東側の地域では大きな被害が出ていたことを知りました。
今回の洪水で被害に遭われた方々が、一日でも早く平穏な生活を取り戻されていることを心から願っています。