旅の記憶

“好き”が息づく場所。一時帰国中に触れた「推し活」と文化の豊かさ

  2025年5月某日

「最近は推しのアクスタ(アクリルスタンド)と一緒にカフェで写真を撮ったりするのも、全然受け入れられててアリな感じだよ」

一時帰国後、間もなくして会った友人と日本の「推し活」について話していたときに、友人がそんなことを言っていました。

実際にそんな光景を目にしたことがなかったので、正直イメージが湧きませんでしたが、少し前に観たドラマでそんなシーンがあったのを思い出しました。

「あ!もしかして、ドラマの『西園寺さんは家事ができない』で主人公の西園寺さんが大好きなシルバニアファミリーと自分のアクスタを並べて写真を撮っていたシーンがあったけど、そんな感じの?」と聞くと、

「そうそう、そういうやつ」と友人。

そして、数日後のこと⋯。

偶然にも推しのアクスタと一緒に撮影している現場を目撃しました。

神宮球場で・・・

推しというほどではありませんが、僕は昔からヤクルトスワローズが好きで、神宮での野球観戦は一時帰国時の恒例行事となっています。

今回、神宮を訪れた日は、こどもの日ウィークということもあり、電光掲示板の選手名もひらがなで表示され、また、スタンドには家族連れの姿が多く、子どもたちの声援が球場に元気よく響いていました。

ちなみに、この日、一番の声援を受けていたのは助っ人のサンタナ選手でした。サンタナ選手がバッターボックスに立つと、子どもたちの「サンタナー!」という声が飛び交い、大人たちの表情も自然とほころびます。

もちろん、声援を送っているのは子どもたちだけではありません。

僕たちのすぐ前の席には、山田哲人選手の背番号1をつけたユニフォーム姿のファンが並んでいたのですが、その中のひとりの女性は山田選手が姿を現すと、「てつとー!!!」と大声で名前を呼び、左手には山田哲人プロデュースグルメ、そして、指先で掴んでいたのは・・・バットを持って構えている山田哲人選手のアクリルスタンド。右手にはスマホ。

ついに、目撃しました。推しのアクスタ撮影の現場を。

残念ながら試合には負けてしまいましたが、球場内は穏やかで満ち足りた空気でした。応援するチーム、選手がいて、そのひとときを心から楽しむ人々。

このような空間が生活の中にあるって、とても幸せだなと感じました。

最近の研究論文でも「推しを自分の一部のように感じる気持ち=心理的所有感」が幸福感を高めるといった報告されていました。

人は「幸せだから推す」のではなく、「推すことで幸せになる」のだそうです。

日本って、伝統文化に限らず、アニメ、漫画、音楽、スポーツ、アイドル、舞台など、ジャンルを越えて好きなものを持つ人たちが、ごく自然に暮らしていますよね。

こうした文化が日常に息づいていることの豊かさを、日本を離れて、年々、しみじみと感じます。

試合が終わり、神宮球場からの帰り道。

信濃町駅から総武線に乗り、8分。水道橋駅に到着です。

水道橋駅には東京ドームがあり、この日も巨人と阪神の試合が行われていました。

ホームからは、ジャイアンツとタイガースのユニフォームを着た乗客が何人も乗ってきます。車内にはスワローズとカープのユニフォーム姿の乗客もいたので、何となく、どこか意識し合うような空気が漂っていました。

「あ、今日、神宮はカープ戦だったのか」みたいな⋯

実際のところ、同じ車両にいたファンたちがどんな気持ちだったのかはわかりませんが、同じスポーツを愛する者同士の連帯感のようなものと同時にライバル球団への静かな敬意のようなものは感じました。

好きをためらわずに表現できて、それを受け止める空気はとても気持ちがいいです。

最後まで読んでくださりありがとうございます。
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ご訪問ありがとうございます、たびなすび(プロフィール)です。現在、マレーシアのペナン島を拠点に生活しています。このブログでは日常の小さな気づきや、心に残った旅の瞬間などをお届けしています。このブログが新たな冒険や発見のきっかけになれば嬉しいです。「住みたくなるようなお気に入りの街」を探す旅に出てみませんか?

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